祝!最新アルバム「FRESH」発売!高田漣による全曲解説!
アルバム『FRESH』は前作『ナイトライダーズ・ブルース』以上に僕の音楽的な趣味が全開の趣味趣味音楽(©大瀧詠一)です。以下、思いつくままにメモを残しますが、きっとまだまだ掘れば色々ネタが発掘される底なし沼のような作品だと自負しております。
「寝モーショナル・レスキュー」
サウンド・テクスチャー的には前作『ナイトライダーズ・ブルース』を踏襲したG・ラブorソウル・コフィン路線で、実際、書かれたのも前作完成直後の早い段階でした。歌詞はあまりにも自分のことなので内容を書く事が憚られますが、日々眠い僕は今現時点でも眠いのですが、曲中では伊藤大地&伊賀航の鉄壁のリズム隊、ハタヤテツヤのどこまでもイヤらしいジャジーなピアノに支えられて、まさしく寝た子を起こす名演かと思います(笑)。
「ロックンロール・フューチャー」
歌詞にも出てくる映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の未来も超えて、もはや「ブレード・ランナー」の時代設定になってしまった2019年。過去からみたら今はどんな時代なのだろう?と想いを馳せて書きました。この作品に限らず『FRESH』でビーチ・ボーイズやフォー・シーズンズなど学生時代に大好きだったコーラス・グループの引用が多いのは平行して制作していたライブ会場限定CD「キッチン・テープス2」(現在頓挫中w)との関連もあります。
「モノクローム・ガール」
アルバムに先行して発売された第二弾シングル。この曲は仕上がるまでに結構時間がかかりました。大瀧詠一さんの「ハンドクラッピン・ルンバ」にインスパイアされて曲を書きはじめた名残りが間奏時の「2番は1番とちょっと違う!」の掛け声です。内容はアナログ盤収集に没頭してしまった男の恋の話なのか、はたまた探し続けていたレア盤が見つかった話なのか?映画「ハイ・フィディリティー」の世界観に強く影響を受けています。
「ソレイユ」
テレビ東京系の深夜ドラマ「フルーツ宅配便」のエンディング・テーマ曲で、ドラマではダンス・グループ「超特急」のバージョンが使われています。どちらも僕のアレンジで聴き比べて頂けたら幸いです。一曲の中で朝から夜までの一日を描くというストーリー性のある歌詞を描けたということは自分にとって非常に自信につながり、それ以降のアルバム作詞活動を相当プッシュしてくれました。歌詞の中の「町でいちばんの美女」はチャールズ・ブコウスキーの同名短編集の引用です。
「最後の楽園」
YMO結成前夜の時期の細野晴臣さんの名インスト曲。いつかカバーしてみたいとしたためていました。サウンド的にはスティール・ギター奏者ノエル・ボッグスの名カバー「テンダリー」を参考にしています。
「ハロー・フジヤマ」
細野晴臣さんの香港公演を観に来たYO-KINGさんが手ぶらだったことに衝撃を受けて書いた曲(爆笑)。歌の主人公は広重さながら甲州街道を旅して富士山を眺めて、気がついたら香港にまで辿り着いてしまったという毎度バカバカしいお話。後半にサケロックオールスターズで披露した楽曲「Bao-Shen」の一節が引用されています。こちらはジャッキー・チェンに憧れた男の話。どうやら僕は昔から相当香港が好きみたいです。楽曲はVulfpeckのようなミニマル・ファンクを意識しました。野村卓史くんの絶妙なアナログ・シンセとバクバクドキンのふたりのコーラスが良い感じです。
「はいからはくち」
大好きなはっぴいえんどのしかも超有名曲。このカバーのサウンドはビースティー・ボーイズの楽曲「Root Down」の引用であり、この曲自体がジミー・スミスの「Root Down」のサンプリングです。ビースティーはまさに文字通りRoot Down(地に足をつけるような、原点回帰)と歌っていて、僕も日本語ロックの開祖としてリスペクトの意味を込めて、必然的にそのビートに乗せて歌わせて頂きました。もはや何の楽器なのか判別不能なフリーキーなサックスは25年来の朋友・福島幹夫。学生時代に一緒にやっていたバンドのナチュラル・リズム・アンサンブルを思い出したり、まさに「Root Down」な一曲です。
「セロファン」
前述のドラマ「フルーツ宅配便」の劇中音楽制作にあたって原作の漫画「フルーツ宅配便」を読み、その世界観から紡いだ曲です。都会へ出た少女と田舎に残った少年のその後の歩みをストーリーにしました。「ソレイユ」と対をなす楽曲で、ドラマ「フルーツ宅配便」の中でもこのメロディーは多用されています。サウンド面ではミシェル・ンデゲオチェロによるTLCのカバー「Waterfalls」の低音感を意識しました。
「GAMES」
ポーカーなどのカードゲームと恋の駆け引きのダブル・ミーニングというチャラい歌詞と80年代後半っぽいエレクトロ・ファンク・サウンドというアイデアで、「GAMES」は『ナイトライダーズ・ブルース』完成直後のプロモーション期間中には既にデモが完成していました。しかし、その後ありがたい事にアルバムが好評であったので、この楽曲は長く放置されたままでしたが、2018年夏に砂原良徳さんとの共同プロデュース作品としてシングル化されました。当初はプリンスや岡村ちゃんを意識した方向性で作業していましたが、気がつくとお互いの共通項のYMO趣味が全開のテクノ・ポップに。いつかこの路線だけのアルバムも作ってみたいです。
「ナナ」
ソロ作が7枚目である事を記念して七拍子の曲を七にまつわるワードを織り交ぜて作ろうと考え作曲を開始しました。「セブン・セブン(映画『サタデー・ナイト・フィーバー』で有名になったカクテルの名前)のオーダー、ジョン・トラボルタのだー!」の韻を思いついた瞬間は天にも昇る気分でした(笑)。図らずも参加してくれたタブラ奏者のユザーンは、このところ七拍子ばかりで呼ばれているとか。七拍子ブームw?中盤や後半の早い4ビートの中で鳴るシンセの感じなどはフライング・ロータス率いる先鋭的なレーベル「ブレインフィーダー」のジェイムスズーなどからの影響大です。
「OPUS ONE」
サイ・オリバー作曲でトミー・ドーシー楽団の録音でも有名な「OPUS ONE」はスティール・ギター奏者のトム・モレルや、古くはレオン・マッコーリフも取り上げたナンバー。このアルバムのエンディング・テーマのように仕上がりました。最後のバースはコーラス・グループの開祖ミルス・ブラザーズのバージョンを参考にYMOの「シムーン」よろしくヴォコーダーで締めました。
高田漣
さらに詳しい解説は・・・ERIS第26号をご覧ください。